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ナーサリーライムの故郷を訪ねて~<マザーグース学会会報189号より転載> |
05月18日 (火) |
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ナーサリーライムの故郷を訪ねて
~ワーズワースとベアトリクス・ポターの故郷を巡る~
(2009年9月、湖水地方への旅の記録より)
中川潤子
すいこまれるような青の空、眩いばかりの光の湖、 まるでタイムスリップしていくかのように フェリーはニアソーリー村へとウインダミア湖を渡って行きました。

総勢11名の『かつて子供だった人達』は、 小さなスーツケースと共に日本脱出、7年前からの計画、第2回イギリスへの旅。 『何はともあれロンドンへ』とナーサリーライムの故郷を訪ねて、 13名のウエンディ達が、『ふくろうとこねこ』さながらに手に手をとって ケンジントン公園へとピーターパンを探しに出かけたのは、 ナーサリーライム研究会を立ち上げてから数年後のことでした。 「また5年後ね!」と再度の英国への旅計画の約束が、 母の最期を看取る為少々遅れ、昨秋9月の実現となりました。 今回、旅の課題はポターの『ナーサリーライム』とワーズワースの英詩『水仙』。
湖上を滑るボートに居て、 私達は未知の国に旅立つ若者のように胸をドキドキさせ、 不思議の国に迷いこんだアリスのように好奇心のかたまりだったように思われました。 あっという間に、ヒルトップの丘に立っていて、 見渡す限りの緑の牧場と石垣… さあ自分探しの旅の始まり… それは遠い昔の自分に出会う旅、 あるいは、未来の自分に出会う旅だったのかも知れません。

ジャックとジルが転がってきそうなヒルトップの丘。 緑の丘の向こうにはボーピープちゃんが羊の尻尾を探していそうで… ニアソーリー村のフットパスを行けば、 石垣のそばに小さなアザミの花が… シンプルサイモン、プラムがアザミになるかどうだか… 白羊の群れの中、バーバー黒羊さんがいるではありませんか! きらきらお星様が出る頃には、 バックルイート(B&B)の暖炉には薪がくべられ、 その横にはウオーミングパン… レイディーバードのおちびのアンは無事にお家に帰れたのかなぁ。 ギネスを乾杯し合うタワーバンクアームズ(パブ)の屋根の上では メウシが月を飛び越えていたのかもしれない… 小人のウインキーのささやき声が聞こえたような夢の中… さわやかな空気が朝日を浴びる頃、 ワーズワースのグラマースクールの屋根の上には24羽の黒鳥が! フクロウ島へ向かうナトキンのようにダーベント湖を渡り、 ワーズワースの如く湖を眺め、 ピーターラビットのようにマクレガーさんの畑を横切ってきました。

4千エーカーもの土地をボランティア団体に寄付するなんてこと、 一匹のウサギがしでかしたこと… そのお陰で、人生の半ばをとうに過ぎた私の残された生活に、 抑えきれぬ程のエネルギーを吹き込んでくれた、 ぬけるように青い空とどこまでも青い水…未来の子供達に譲るもの。 「美しいものを子孫に譲ることに反対する人なんて誰も居ないわ」という ベアトリクス・ポターの凛とした生き方を教えてくれた今回の旅。

帰国後開催した<kotobaフォーラム>でのイギリス旅行参加者による旅のレポートには、 あふれんばかりのナーサリーライムがちりばめられ、 ワーズワースの詩『水仙』の発表では、 黄花水仙の一群がふいに現れたような錯覚に捉われたのも不思議な事ではないようです。 きっとそれは、生き生きと語られることばが 湖水地方に残る先人の心を伝えてくれたからではないでしょうか。 「子供達に素晴らしいものを残すことに反対する人なんて誰も居ない」 英国への旅は私にそう囁きかけています、緑の風の中で…
ナーサリーライム研究会に イギリス訪問の機会が与えられたことに感謝して。
マザーグース学会会報189号より転載
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