本名信行先生のご講演「国際コミュニケーションと日本の英語教育」 |
05月20日 (火) |
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4月21日ラボ教育センターにて、青山学院大学教授、ラボ言語教育総合研究所研究員である、本名信行先生より「国際コミュニケーションと日本の英語教育」について興味深いお話がございましたので、少し日が経ちましたが、思い出しながらご報告致します。
1.英語とはどういうことばか
あらためて、現代の英語は、他の言語とは異なり、いろいろな国の人々と話す「国際言語」、Intermediate Language(仲介言語)である。決してForeign Language(外来語、いらない言語)ではない。世界は、English as a Native Languageとする国(USA,UK,Canada,NLetc.)と、English an a Second Languageとする国(India,Singapole,Ghana etc.)、English as an International Languageとする国(China,France,Spain,Japan etc.)に分けられる。ESLでは、いろいろな発音、いろいろな言い方の英語が普通に使われている。脱英米化している。しかも人口の上では、ENLよりもESL,EILの方が多い。したがって、我々日本人は、Native Speakerのようになる必要はなく、Non Nativeとしての英語を話せればいい。しかも英語のCapacityは膨張しつつあり、Non Native Speakerがつくりだした英語が増大しつつある。
英語は、"World Englishes"である(1983年Larry Smith氏)。
2.なぜ英語は必要か
英語は、①学問、研究、②どんな仕事にも役立つ道具 ③個人の可能性を伸張する1つのことばとして、我々は学ぶ必要がある。ASEAN10カ国、EUでの共通語であり、日本人以外の人々とコミュニケーションをとるために必要不可欠な言語であることはビジネスの世界の人々にとっては周知のこと。
3.小学校英語教育
中国、台湾、各国、極東ロシアで、小学校から積極的に英語教育を始めている。文科省も、2003年「英語が使える日本人」の育成を目標にすえた。「国民全体に求められる英語力」として中学校では英検3級、高等学校では英検2級~準2級を国民の5割がとれるようにしたい。この前提として、小学校段階における外国語活動は、中学校段階の文法の前倒しではなく幅広い言語に関する能力や国際感覚の基盤を培うためのものに。そこで今年から「英語ノート」が全国800校で開始導入された。しかし児童小学生英語教育の難しさが明らかになっている。歌・踊り・ゲームではあきられる。英会話も行き詰まる。そうかといって文法・単語の暗記では、現実の運用場面がないため、動機付けが難しく、英語嫌いを増やすことになる。英語嫌いで「753」という言葉があり、7割→5割→3割と学習するにつれ好きな子が減る傾向を指す。こうした学習重視は、知識格差を生む結果にもなっている。
大切なことは「Pull要因をひろげること」(動機の向上)。
4.ラボのテーマ活動とその教育力
ラボのテーマ活動は、世界に類をみない英語教育。日本や中国、韓国など、現実に英語を運用する場面の少ない国で非常に有効な教育。子ども達が物語を楽しみながら、文法、単語を自然に学んでいくことができる。またラボ・ライブラリーは、世界の昔話・物語の宝庫であり、感性、想像力をおおいに刺激する。どんな面白い本も教科書になると面白くなくなるが、このライブラリーの場合は、CDもあり、音声と音楽が臨場感を高め、表現豊かな教材となっている。英語・日本語で語られていることも意義が大きい。無意識に「ことば」を獲得できる。日本語を使うことによって核心を理解でき、新世界への導入がなされている。複合型バイリンガルにつながる。母語教育の重要性を強調することは、小学校英語教育を否定することにはならない。身体と心を動かす英語表現活動は、学校を卒業しても「英語が逃げない」(現青山学院初等部の元ラボっ子の英語の先生の言葉)。また国際交流活動も盛んで国際社会で必要な「言語力」「異文化間リテラシー(知識・能力)」も身につけることができる。ラボは、英語教育を超越した人間教育でもある。
以上の他、学校とは別世界のラボの場におけるテュ-タ-の特別な存在についてお話がありました。
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やや個人的にまとめてしまいましたので、同じ講演を聞かれたテュ-タ-の方で訂正を加えていただければ幸いです。
私個人の感想としては、「Non Nativeとしての英語を話せればいい」という言葉に、あらためて勇気づけられる思いがしました。
子ども達には、細かいことは気にしないで、積極的に、自分の英語を話すんだ!ぐらいの気持ちで、どんどん使ってもらいたいと望んでいます。テーマ活動を通して習得してきた言語を、子ども達がより積極的に使えるよう機会を与えてあげること(国際交流など)。発表会後しばらく続くライブラリーの言葉を使った会話が、国際交流の場のみならず、日常の場でも自然によみがえり使えるよう、より工夫してあげることができればと感じています。
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