社会力のある子を育てよう
―果たすべき大人の責任とは何か―
筑波大学教授 門脇厚司氏講演より
1.「若い世代」の何が問題なのか?
* 「他者の取り込み」不全・・・他者への無関心・人間嫌い・他人との接触恐怖
* 非社会化の高進・・・引きこもり・お宅人間の増加
2.ヒトの子が「人間になる」とはどういうことか?
* 社会的動物になること・・・「社会力のある人間」になること
* 様々な人たちといい関係を作り、日常生活を滞りなく過ごせる人間になること。
3.「社会力がある」とはどういうことか?
* 他者への関心・愛着・信頼感があること。
* 社会の運営に積極的にかかわり、よりいい社会の実現に貢献できること。
4.社会力はどのようにして培われ育まれるのか?
* ヒトの子が線的に備えている高度な環境との応答能力を解発しフル稼働させること。
* そして、多様な他者と出合い、交わり、相互行為を繰り返すこと。
5. 社会力のある人はなぜ充実した幸せな生涯を送れるのか?
* 社会力があると、賢くなり、達成意識が高まり優れた業績を上げることになるから。
* 社会力がある人間は、多くの人といい人間関係が作れ、互いに認め認められ、支え支えられながら生きていけるから。
* 社会力がある人間は、生涯成長し続けられるから。
<参考図書>
門脇厚司「子どもの社会力」(岩波新書) 「学校の社会力」(朝日選書)
「社会力が危ない!」(学習研究社)
川島隆太「自分の脳は自分で育てる」 森昭雄「ゲーム脳の恐怖」
《教育新聞》社説 (平成15年1月1日)
新しい小・中学校の学習指導要領は、各学校が「ゆとり」の中で、「特色ある教育」を展開し、基礎的・基本的な内容を確実に身につけさせ、自ら学び自ら考える力など「生きる力」を育むことをねらいとしている。これに対して多くの学者などから反発の声が出ている。・・・中略・・・
ここで提案したいのは、「基礎・基本」の定着を図るための『基礎学力』と、「生きる力」を育むための『社会力』の育成の2つである。この「読み・書き・計算」を中心とする学習方法は、コミュニケーション能力や身辺自立などの前頭前野機能を改善することに役立っている。一方、「人が人とつながり、社会を作る力」つまり『社会力』の育成、生きる力の中核は、社会力で、他人に対する関心・愛着・信頼感を培う必要がある。それを総合的学習の時間で育てて欲しい。 |