★テキサスの青い花 |
06月02日 (木) |
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テキサス州の州花をご存知ですか。
アメリカ・テキサスの春の丘は、目のさめるような青い花でおおわれるそうです。
ルピナス、あるいは現地ではふつう、ブルーボンネットと呼ばれているとか。
わたし自身はテキサスに滞在した経験はなく、
この花をそこで見たわけではありませんが、
この5月の最後の週末、長野・安曇野と上高地、穂高などを旅行しながら、
たまたま各所でその花が群生しているのを目にする機会がありました。
6月が目前とはいえ、安曇野はまだ春が訪れたばかり、アルプス連山の雪形が
くっきりと浮かび、野は目にしみるような新緑にうずもれていました。
3台のレンタカーを連ねてのグループの旅でしたので、
写真撮影のためにと、わたしだけ勝手に停車するわけにはいかず、
運転しながら路傍の花を横目で見るだけにとどまりました。このルピナス、
このごろは改良種がつぎつぎにあらわれ、わたしの住む町でも、青だけでなく、
じつにさまざまな色のものが見られます。
しかし、これほど群生している景観を奥信州で目にするとは、意外でした。
高原の澄んだ風のながれのなか、それはあざやかな色を見せていました。
原産地はギリシアなどの地中海沿岸地方。マメ科の多年草。
この花がテキサス州花で、テキサスの先住民コマンチ族と深いゆかりをもっている
と知ったのは、トミー・デパオラの『青い花のじゅうたん』という絵本
(評論社刊、いけださとる・訳)によります。
トミー・デパオラの作品が新しくラボ・ライブラリーの仲間に加わると耳にしましたが、
その絵本作家が、コマンチ族の昔ばなしから再話し、絵を描いて刊行した、
ちょっとシックな絵本。一人の少女の犠牲とけなげな勇気を描いています。
その年、テキサスにいのちを恵む雨がなく、日照りが長くつづきました。
たくさんの子どもや老人たちが飢餓のなか、死んでいきました。
わずかに残った子どものなかに一人のかわいい少女がいました。
この子はおかあさんがつくってくれた鹿の皮の兵士の人形を持っています。
なによりの宝物として、とても、とても大事にして持っています。
飢饉に困りはてた人びとがティピ(動物の皮でつくったテントの住まい)の前に集まり、
まじない師のことばを聞きます。
――これは、人間がじぶんのことしか考えないようになってしまったからだ。
大いなる精霊はいけにえを求めている。この日照りつづきと飢饉を終わらせ、
この地にいのちをよみがえらせるためには、われわれがもっているもののうちで、
もっともたいせつにしているものを燃やして供えなければならない、と。
少女も、離れたところからそのことばを聞いていました。
自分がいま何をしなければならないかを知った少女は、
夜になり、みんなが眠りについてシーンと静まりかえると、そっと外へ出て、
丘のうえにのぼり、枯れ枝を集めて火をつけ、ぼうぼうと燃える火のなかに、
宝物にしてきたお人形を投げ込みます。
そして翌日、朝日に目ざめて丘を見ると、丘が一面きれいな花におおわれていました。
これがルピナス。
やがてテキサスの大地に雨が降り、すべての生きものがよみがえります。
以来、テキサスの丘や谷は、春になると、ルピナスの青い花でうめつくされるようになった、
という、そういうおはなし。北米先住民族の素朴な生活と信仰がうかがえますね。
この夏も多くのラボっ子がアメリカ・テキサス州で交流を結ぶことでしょうか。
なんとまあ、この花ことばは「多くの仲間」だという。
こんなおはなしをこころのすみに抱いて海のむこうへ発ってくれるといいなぁ、
と思うものですから。
※…写真はいずれも、安曇野のものではなく、わたしの家の近所で撮ったものです。
※…画像2点削除
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Re:★テキサスの青い花(06月02日)
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Bettyさん (2005年06月02日 19時11分)
はじめまして♪
「テキサスの青い花」・・先日図書館で見つけ、手にとって見ました。
トミー・デパオラだったので、ちょっと得した気分でした。
がのさんのご近所のルピナス、とってもきれい!
バーバラ・クーニーの絵本「ルピナスさん」も、世界をもっと綺麗にし
ようと村をルピナスでいっぱいにしたステキな女性の話です。
宮沢賢治のシリーズ&お花も、とてもステキです。
ブルーベル、いろんな種類があるんですね。
とっても、癒されました♪
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Re:Re:★テキサスの青い花(06月02日)
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がのさん (2005年06月03日 10時06分)
Bettyさん
>がのさんのご近所のルピナス、とってもきれい! バーバラ・クーニ
ーの絵本「ルピナスさん」も、世界をもっと綺麗にしようと村をルピナ
スでいっぱいにしたステキな女性の話です。
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ありがとうございます。“ルピナスさん”の夢をアメリカ・ニューイン
グランドに住むターシャ・テューダーさんの夢に重ねながらわたしも読
みました。「世の中を美しくするため」の魔法を使うルピナスさん、そ
れと、人間がじぶんのことしか考えなくなったためにコマンチの神が怒
った、…なにか、いまわたしたちがしっかり考えねばならないことを語
ってくれている作品のように思えます。
死に絶えた丘。少女のほか、生きているものといって何もない。夜空い
っぱいにひろがる星。大事にしていたお人形を焼き、火が消える。その
灰を両手にとって風の生まれるほうに向かって撒くこの聖処女こそ、精
霊なのかも知れません。
正直に申し上げますと、わたし自身はあまりこの花を好んでいるわけで
はありません。ちょっと自己主張が強すぎるというか…。北米を中心に
300種ほどあるそうですが、いずれも、頸さ・たくましさを感じ、いかに
もアメリカ的で。花はつつましさこそ、野にあってこそ、な~んちゃっ
て! じつは、この日記を書きましたら、熊本に「ルピナス」さんをハ
ンドルネームにする方がおいでで、勝手にわたしの好みを書いたりして
はまずい! と思っているところ。
ついでながら、この花、日本名で「昇り藤」「立ち藤草」などというこ
とがあるそうですね。なるほど、フジの房を逆さにしたように見えない
こともない。花ことばを「多くの仲間」と書きましたが、「創造力」と
いうのもあるようです。どちらにしても、ラボの活動のキーワードのひ
とつですね。
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Re:★テキサスの青い花(06月02日)
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カトリーヌさん (2005年06月04日 14時06分)
テキサスなら、私!というわけでとんできました。そして、自己主張の強
い?ブルーボネットは、まさに私の花です?私はこの花が好きで好き
で・・・咲き方が半端じゃない。あの、テキサスの大地ですよ。一年に一
度、短い間だけ、ブルーボネットの絨毯になるのです。それ以外は、不毛
の地。どうやって越年しているのか本当に不思議。トミー・デ・パオラの
絵本ももちろん、テキサスで買いました。テキサスというところは、郷土
愛が強くて、ご当地グッズのお店が、観光客だけでなく十分に成り立つと
ころ。あちこちにサボテンやアルマジロ、ブルーボネットグッズがいっぱ
い。「Norikoがまた新しいブルーボネットグッズを手に入れた」と、ドン
キホーテじゃないけど、地元の皆さんの受けもよく、私も一気にテクスン
(テキサス人)になりました。ブルーボネットはルピナスのように大きく
ないのです。むしろ小さくて可憐です。でも大群生しているのです。
ちょっと、日本のレンゲ畑のような、そんな感じだと思います。同じマメ
科だし。心情的にも。デ・パオラのこの絵本もタイトルだけで、そういっ
た心情をすでに示しているのですね。
テキサスを離れた今も、ブルーボネットやテキサスグッズに囲まれて、幸
せなテキサス時代を思い出しています。ラボっ子たちも、ステイ先のご当
地グッズを自分へのおみやげに買ってくるといいですよ。ほんとうに。一
生の思い出です。
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Re:Re:★テキサスの青い花(06月02日)
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がのさん (2005年06月04日 21時55分)
カトリーヌさん
>テキサスなら、私! 自己主張の強い?ブルーボネットは、まさに私
の花です? 私はこの花が好きで好きで…。咲き方が半端じゃない。あ
のテキサスの大地ですよ。一年に一度、短い間だけ、ブルーボネットの
絨毯になるのです。それ以外は、不毛の地。ブルーボネットはルピナス
のように大きくないのです。むしろ小さくて可憐です。でも大群生して
いるのです。日本のレンゲ畑のような、そんな感じだと思います。
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ルピナス、Blue Bonnet (という自己主張の強い花!)が、カトリーヌの
かつての幸せなテキサス生活の記憶とともにあるというのは、望外なこ
とで、たいへん結構なことでした。そうでしたね、テキサスでしたね。
いろいろなことを教えてもらいました。テキサスではこの花をふつう
Blue Bonnet と呼び、いまわたしたちが目にするルピナスとはだいぶ違
うらしい。「ルピナス」の語源はラテン語のほうから来ているようで、
オオカミ(だったかな?)に由縁すると園芸店の知人から聞いたように思
います。頸さ、逞しさのイメージをともなうのもそのためかも知れませ
ん。ところがテキサスでは”Blue Bonnet”…ご婦人の外出時に着用する帽
子、古いファッションに見られるあの帽子と結びつけて語られる。この
花のどんな印象とむすびついてブルーボネットといわれるのか、よくわ
かりませんでした。何か現地で人口に膾炙されている由縁話はあります
か? ひとつわかったことは、お書きいただいたように、またデ・パオ
ラの描く絵のように、レンゲに近い印象の、丈の低いものであるらしい
こと。わたしたちがこのへんで目にする40~70センチもの高さをもつ花
ではないようですね。紀元前の古代エジプト時代から栽培され、牧草と
して使われていたそうですから、もともとはレンゲ草に近いものだった
ろうと想像されます。テキサスやエジプトという乾燥地帯。それにひき
かえ、日本でもっとも色の美しいその群生を見ようと思ったら、北海道
とか信州の安曇野・上高地といった冷涼地へ行くことになる。野生種が
すっかり観賞用に飼い馴らされ、植性も変わっていまのすがたになった
のでしょうね。ご当地のブルーボネットグッズ、こんどホームページで
ご紹介くださいませんか。
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