Re:Re:◆チェロの名曲たっぷり、ウイーンの香りにつつまれた春の午後(03月23日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年03月28日 23時39分)
dorothyさん
【その3】
ところが、一転、どうしてケネディの招聘に応じて、まぶしいほどの
シャンデリアの下でチェロを抱えることになったのか。ケネディもフラ
ンコ政権を否認したわけではありません。理由は、ご本人もどこかで述
べているようですが、危機に立つ世界の情勢を十分に認識したことと、
ヒューマニズムを掲げる大国の指導者としてのケネディを信頼したこと
によるらしい。
たしかにそのあたりの歴史を思い起こしてみると、わたしにもまだ記
憶に新しいですが、スエズ動乱があった、ハンガリー暴動があった、泥
沼に入ったベトナム戦争があった、朝鮮半島の争乱があった、米ソ間の
冷戦と核実験の競争があった。そのままでは人間が損なわれ、地球が滅
亡への歩みを速めることが見える時期でした。人間の自由と尊厳を至上
のモラルとする共和主義者のカザルスは、そろそろ高齢期にもきてい
て、ケネディという新しい息吹きをもつ世代に期待、…というよりは、
この人物を信用してみたかったのではないでしょうか。
今回調べたところによると、ピアノのホルショフスキー、ヴァイオリ
ンのシュナイダーとともにそのときホワイトハウスで演奏したのは、メ
ンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲第一番」、クープランの「チェロと
ピアノのための小品」、シューマンの「アダージョとアレグロ変イ長
調」、そして「鳥のうたSong of the Birds」だそうです。とりわけ「鳥
のうた」にカザルスの思いが深くこもっていたことは想像されるところ
ですね。
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Re:Re:◆チェロの名曲たっぷり、ウイーンの香りにつつまれた春の午後(03月23日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年03月28日 23時38分)
dorothyさん
【その2】
>私も、音楽を聞いて滂沱の涙を流します。私が流したことのある涙と
がのさんのそれとが同じかどうかはわかりませんが、語られている状況
から、想像して私も心が温かくなりました。
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「滂沱の涙」とは、ちとオーヴァーな表現でしたかね。音楽とは離れ
て、カザルスのあまりにもストイックな生き様とスッとわたしのなかで
結びついてしまうものですから、ついホロリと。音楽家として、芸術家
として偉大な存在であったという点だけでしたら、いくらでもそういう
人はいますが、チェロというひとつの楽器を通して、世界平和をあくな
く希求し、人間のゆるぎない「信」とは何かを求めて、無限の可能性を
引き出した人、とでもいいましょうか、今回、dorothyさんの書き込みを
読ませてもらったあと、少し調べてみました。
ホワイトハウスでの演奏についてなのですが、ちょっと疑問に思うと
ころがありまして。じつは三度そこで演奏しているんですね。第一回は
1898年、マッキンレー大統領(第25代)の前で。次が6年後の1904年、ル
ーズベルト大統領(第26代)の前で。で、先に書きましたケネディ大統領
(第34代)の前でおこなった非公開の演奏は、半世紀ものブランクをおい
た1961年のことでした。その間、アメリカでの演奏活動はやっておりま
せん。いや、アメリカのみならず、亡命の救済にあたってくれたフラン
スでも、イギリスでもやっておりません。ピレネー山脈の、ある山村に
ひっそりと引きこもり、音楽界から引退してしまいます。スペインに民
主主義政権が生まれるまで、楽壇には立たない、と。
なぜそんなにまで頑なに?
図らずもここにまたカザルスの真骨頂を見ることになりました。祖国
スペインのフランコ独裁政権を容認する国では、ぜったいにチェロとい
う楽器をもたない、という、人間としての信念と誇りですね。ですが、
祖国を捨てたとはいえ、祖国を忘れたことはなく、事実、名曲「鳥のう
た」はカタロニアの民謡を編曲したもので、カザルスの泣きたいような
望郷の思いのこもった曲であることは間違いありません。
【つづく】
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Re:Re:◆チェロの名曲たっぷり、ウイーンの香りにつつまれた春の午後(03月23日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年03月28日 23時22分)
dorothyさん
【その1】
>私は、結婚して間もない頃、夫とバッハの無伴奏チェロを聞きに行っ
たことがあります。片道1時間以上を車で。聞きたくて、音楽ホールに
行ったのですが、本当によかった。
チェロの深くて包み込むような音色はまるで母親の羊水の中のよう。穏
やかにゆられながら、安心だよ、温かだよと語りかけられている心地が
しました。
----------------------------
羊水のなかにいるようなやさしさ。なるほど。ええ、いろいろな例え
方があるでしょうが、あの音は魅力的でしびれまいよねぇ。「騒ぎまわ
る蜂の羽音のようだ」と言った毒舌家(バーナード・ショー)もいます
が、そういう人には「どうぞご勝手に!」と、ちょっと鼻の先でフン
ッ! でいいと思いますが、とにかく、からだじゅうの細胞が生き生き
と動きだすような、戦慄に近いものを覚えます。
音楽の方面には明るくないのであまり言うこともないのですが、バッ
ハの「無伴奏チェロ組曲」と聞いては、ちょっと黙してはいられない思
いがあります。わたしもこの全6曲のCDを、捨てもせず人にあげもせ
ず、持っています。カザルスのものです。
カザルスは12歳のときにこの曲と出会ったといわれますね。大天才が
震えるような感動とともに、命をかけるに足る巨大なものと出会った瞬
間。以来12年間、片時もおろそかにせず、この曲との戦いです。美の真
髄を求めて徹底的に曲を研究し練習を重ね、そして、25歳のとき、バッ
ハが死んで以来はじめて、その全曲演奏が彼によっておこなわれまし
た。伝説のようにいまに語られているエピソードですね。
180年ものあいだ眠ったままでいたその曲が、カザルスによって蘇った
瞬間。20世紀のはじめのころです。以来、この曲はチェロ奏楽の聖典と
なっています。はい、どうしようもなくすばらしい曲です。魂の底まで
ひびく曲です。これをプレーヤーにかけると、バックグラウンド・ミュ
ージックにはならず、仕事の手は止まり、頭のなかにほかのもの一切が
進入しなくなります。
【つづく】
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Re:◆チェロの名曲たっぷり、ウイーンの香りにつつまれた春の午後(03月23日) [ 関連の日記 ]
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dorothyさん (2009年03月27日 14時07分)
いわきの海岸ぞいには、「パブロ」というレストランが
あります。
その中に掲げてある絵はピカソ、静かにかかってる
音楽は、カザルスのもの。
田舎の観光地のレストランとは思えないところです。
私は、結婚して間もない頃、夫とバッハの
無伴奏チェロを聞きに行ったことがあります。
片道1時間以上を車で。都会なら1時間以上
かけての移動も珍しくはないけれど、まだ
不慣れな時期、車で1時間以上はちょっと
大変でした。それでも、聞きたくて、音楽ホールに
行ったのですが、本当によかった。
チェロの深くて包み込むような音色は
まるで母親の羊水の中のよう。穏やかに
ゆられながら、安心だよ、温かだよと
語りかけられている心地がしました。
私も、音楽を聞いて滂沱の涙を流します。
私が流したことのある涙とがのさんのそれとが
同じかどうかはわかりませんが、語られている
状況から、想像して私も心が温かくなりました。
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Re:Re:◆チェロの名曲たっぷり、ウイーンの香りにつつまれた春の午後(03月23日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年03月25日 14時07分)
さちこさんさん
>とびきり上等で豊かな一日のお裾分け、お花の写真もとっても素敵。
ホ~ッと一息つかせていただきました。
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そうですね、とびきり上質なとき、至福のとき、天賦のときに恵まれ
たひとときでしたね。
もう、生きるに疲れた年齢に近づいているし、もっとゆったりとした
自分の時間を持つ必要があるとはわかりつつも、日々、多事に追われ、
シッタバッタと自分を棄てて落ち着きなく過ごすことが多いなか、ポッ
と、たまにはこんなプレゼントがあってもいいですよね。…と言いなが
ら、片足はやはり地域の人びとに格別の悦びの時をプレゼントする側に
あるのですけれど。
絵画もいい、音楽もすばらしい。とりわけホンモノはこころにさわや
かに落ちてくる。新鮮な感動で存在をつつみ、癒してくれます…、母の
ようなやさしさで。
そして、もうひとつ言えるのは、自分のこころにブレなくテーマに向
かいあい、まっすぐ夢中になって取り組んでいるからこそ、そのふとし
た瞬間の透き間に与えられる美しい賜物がゆたかな輝きをもって自分に
近づいてくるのかも知れません。何であれ、からだが動くというのはあ
りがたいことで、たぶん、ボーッとヒマをもてあまして時間をすごして
いたら、その輝きは見えないのかも知れません。
身にあまるほどのものを抱え、苦しみつつも、それをひとつずつ推し
進める動きのなかにこそ、自分のこころにあるものが確かめられるとい
うこと。たとえわずかな手応えしかなくても、その確かさをつくづく感
じ、いとおしむこのごろです。
さわやかな花の恵みを親しい人とともに愛ずる、それも、かけがえの
ない至福のときです。
子どもたちの無垢な笑顔も、どれほどひとを幸せにしてくれるか。そ
うお思いになりませんか、さちこさんも。
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Re:Re:◆子どものイタズラ。あなたは、怒りますか、それとも叱りますか?(03月12日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年03月24日 22時06分)
dorothyさん
>「青少年育成」、拝読しました。しみじみ、感じています。いろいろ
と言いたいこと、考えたことも書きたいのですが、私のような人間が何
かを語るのはおこがましいので、ただただ、感じ入った、とだけ、書い
ておきます。
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いつもながらの、わたしの長々しいたわごとを読んでいただいただけ
でも、感謝です。「しみじみ」「感じ入った」と言っていただけるなん
て、ほんと、もったいないこと、過分なことと感謝するのみです。
いのちの先が見えてきたこの年齢にしてまだ自分のなかの針が定まら
ず、あっちに揺れ、こっちに揺れるまま、とにかく、目の前をかすめる
課題をとらえ、体当たりするだけ。都度、わが身の無能を知らされるの
がこの日々です。もっと才能に恵まれて生まれてきていたらなあ、と。
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:◆子どものイタズラ。あなたは、怒りますか、それとも叱りますか?(03月12日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年03月24日 21時43分)
サンサンさん
>がのさんのなかには、あふれるようにいろんなことばがあるのです
ね。汲んでも汲んでも枯れることのないことばの泉が、、、ことばはあ
ふれるような想い、、、から湧いてくる。
がのさんもぜひ、思いをまとめて私たちの子孫のために残してくださ
い。
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わたしごときには、ありがたすぎる、過分な、もったいないお心づか
いです。しかし、それはどうも、おメガネちがいかと思います。
不用意にいろいろなところにいろいろなことを書き散らしているもの
ですから、中には目をつけるものがいて、家にいると、たいがい日に2
~3回、自費出版しないか、書きためてある原稿を読ませてもらいに行
ってもいいか、といった電話があります。
もちろん、すぐにお断りします。
出版編集の仕事に携わってきた感覚から、わたしの書くものがたくさ
んの人に読まれる、たくさん売れる、ということはぜったいにないと知
っていますので、読まれもしない、売れもしないもののために多くの人
が苦労する必要はないし、第一、そんなムダなことで地球の資源を浪費
しては、後世の人びとに申し訳ありませんし。
ヒマがあると書店をのぞくのが慣わしですが、大型書店にあふれる書
籍のヤマ、ヤマ。そのうちのどれほどが読むほどの価値があるでしょう
か。事実、そのほとんどは誰にも読まれないまま売れ残って返品され、
裁断にズタズタにかけられてゴミとして処分されるだけ。それを思う
と、わたしには本を出したいという誘惑はそらぞらしいだけです。
正直なところ、かつてある時期、出版するつもりで書いたものも何作
かありました。自分の生きた証しに遺しておきたいと。でも、そんな誘
惑がどれほど浅薄なものかを知り、モノを欲しがるこころは極限のとこ
ろまで捨てよう、と決めました。何も遺さず、この世から露のように溶
けて消える、それをよしとして「いま」を恬淡に生きる、そんな心境で
して。子孫のため、なんて、恥ずかしくて、とてもとても…。
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Re:◆チェロの名曲たっぷり、ウイーンの香りにつつまれた春の午後(03月23日) [ 関連の日記 ]
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さちこさんさん (2009年03月24日 10時30分)
とびきり上等で豊かな一日のお裾分け、
ご紹介くださりありがとうございました。
お花の写真もとっても素敵。
はる、ハル、春!!
ホ~ッと一息つかせていただきました。
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Re:◆子どものイタズラ。あなたは、怒りますか、それとも叱りますか?(03月12日) [ 関連の日記 ]
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dorothyさん (2009年03月23日 21時06分)
「青少年育成」、拝読しました。
また、サンサンさんとのやりとりも。
しみじみ、感じています。
いろいろと言いたいこと、考えたことも
書きたいのですが、私のような人間が
何かを語るのはおこがましいので、
ただただ、感じ入った、とだけ、
書いておきます。
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Re:Re:Re:Re:Re:◆子どものイタズラ。あなたは、怒りますか、それとも叱りますか?(03月12日) [ 関連の日記 ]
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サンサンさん (2009年03月23日 18時01分)
がのさん
がのさんのなかには、あふれるようにいろんなことばがあるのですね。
汲んでも汲んでも枯れることのないことばの泉が、、、
ことばはあふれるような想い、、、から湧いてくる。
がのさんもぜひ、思いをまとめて私たちの子孫のために
残してください。
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