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文学館のようなリゾートホテル 09月03日 ()
✦文学館のようなリゾートホテル

横浜の熱暑を避け、ここ数年、7月には上高地、
8月には諏訪または蓼科に遊ぶのが習わしになっています。
それなりの曰く因縁はあるのですが、とにかく好きなんです、あのへんが。
この8月に訪れたのは、蓼科温泉「ホテル親湯」。
蓼科高原の奥の奥にある、開業90年の老舗ホテル。
ここは、わたしの文学の師のひとりが、折につけ来ている定宿。
その師は、森鴎外の一族と親交があり、とりわけ次女の杏奴(あんぬ)さんと
その夫の小堀四郎画伯とは、生前、機会あるごとにここで会って
尽きぬ文学談義、美術談義を交わしていたといいます。
そのことをよく聞かされていて、以来、わたしには憧れの宿だったというわけ。
なかなか夢は遠く、実現しなかったのですが、
じつは、ラボ職員のOB有志でつくるLabo Evermate Cl ub というのがあり、
そのメンバーで3年前、2013年6月、ここで一泊、ついに実現しました。
ただ、そのときは、気ごころの知れた十数名の仲間どうし、
一時期、テーブルを並べて働いたものどうし、いったん話が始まれば
夜を徹して爆撃弾のように昔がたりの会話は弾み、しこたまアルコールに酔って
せっかくのすばらしい温泉にもろくろく浴しなかったようなありさま。
ご馳走が何だったか、まったく記憶にないヤボテンぶり。
だめですねぇ。ほんと、ヤボテン。 そんなだらしない俗欲とは裏腹に
ここがとんでもないところだと、今回はじめて知りました。

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いたるところに、本、本、本。おびただしいばかりの書籍。
ギャラリーの一室に集中的に置かれているのはむろんのこと、
ロビーのあちこち、通路のわき、大浴場の前の休憩所……、など
ちょっと視線をめぐらせば、かならずそこにぎっしりと書籍が。
俗悪なものやマンガや雑誌を除いては、文学・評論方面、美術、
音楽、心理学、哲学、歴史…、古典もの、現代もの、
およそなんでもござれ、で、まさに図書館か文学館。
いや、もしかすると、質と量において
そこらの文学館よりよほど充実しているかも知れません。
ご覧ください、ギャラリーに通じる通路の両壁面の書棚には
岩波文庫の赤ラベル(洋)、青ラベル(和)がズラリッ!

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pb921  

こんなの、図書館でも文学館でも見たことありません。
どうでしょうか、これまで刊行された岩波文庫のすべてが揃っているのかも。
これらの本を読むことを目的にこのホテルに宿泊するようなひとは
まずいないかと思いますが、珍しい趣向の老舗ホテル。
文士たちがよく宿泊した宿としては、熱海の「起雲閣」もありますが、
そこには図書類はまったく置かれていませんでしたね。

明治、大正、昭和初期、ここ蓼科には多くの文人たちが集い、
別荘を保有するなど、一大文学保養地となっていました。
ホテル親湯とのゆかりでは、ひとつには、太宰治が新婚旅行で来ていますね。
井伏鱒二の媒酌で美和子さんと再婚したときですが、太宰は
酒に乱酔して美知子さんやホテルのひとをさんざん悩ませたというエピソードも。
瀬戸内寂聴が北原白秋と3人の妻たちをめぐる取材で長逗留していますし、
「野菊の墓」の伊藤左千夫や、歌人の土屋文明、島木赤彦、斎藤茂吉、
高浜虚子らも、ここを定宿にしていたようですね。

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NHKの朝ドラ「花子とアン」をご覧になりませんでしたか。
村岡花子の生涯を描いた、なかなかいいものでしたね。
そのドラマの中に登場した印象深い女性、柳原白蓮(びゃくれん)のこと、
覚えておりますか。「大正三美人」の一人とされる美貌の歌人。
華族として生まれながら、生家の没落により意に染まぬまま
九州の炭鉱王に嫁します。しかしその関係はやがて冷え、破綻します。
彼女は七つ年下の青年と恋に落ち、姦通罪を問われながら捨て身の駆け落ち。
これが当時たいへんなセンセーションを巻き起こした「白蓮事件」。
連れ戻され監禁されるなかで子どもを出産するなどの困難と苦痛に耐え、
2年ののち事態はどうにかおさまります。ふたりの恋は成就され、その後
蓼科に別荘をもって、ふたりの子どもとともに幸せに暮らし、
波乱万丈の人生をここで閉じたとされます。

「わが命 惜しまるるほど さいわいを 初めて知らむ 相許すとき」

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柳原白蓮の自筆掛け軸

ついでにもうひとつ。いまや日本を代表する世界的な巨匠、小津安二郎が
この宿を舞台に多くの映画作品をつくっていること。
「晩春」を、「東京暮色」を、「青春の夢いまいずこ」などを…。
ああ、わたしの泊まったあの客室、もしかすると、
あの伝説の美貌の大女優、原節子が使っていたのと同じ部屋…?
緑に埋まったあの露天風呂で、ワオ~ッ、“永遠の処女”原節子もゆったりと…。
(バカだね、もともと露天風呂は男女別々だよ)

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小津安二郎の諸記録
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