★青空のむこうに吸いこまれていった小さい女の子 |
07月24日 (月) |
|
あまんきみこ「ちいちゃんのかげおくり」
小夜――おとうさん、“かげおくり”しよう。
がの――むりですよ、それは。こんな梅雨空で、いまにも雨がおちてきそうじゃないの。それをするなら、雲ひとつない、まっ青な空がいっぱいに広がっているようなときでなくちゃ。
小夜――ちいちゃんは、ひとりぼっちになったあと、青い空からのおとうさん、おかあさんの声を感じて、かげおくりをしました。ひと~つ、ふた~つ…。
がの――ここのつ、と~お。……スーーッとかげが立っていき、青い空にくっきりと白いすがたがあらわれました。
小夜――ふしぎ。それはちいちゃんひとりだけのかげではなく、おとうさん、おかあさん、おにいちゃんもいっしょのかげでした。おとうさん、おかあさんのあいだに、ちいちゃんとおにいちゃん。みんなでしっかり手と手をつなぎあっていましたね。
がの——そして、そのまま、ちいちゃんのからだは風のようにすきとおって、すうーっと空のむこうへ吸い込まれていきました。
小夜――おとうさんは、小さいころ、 “かげおくり”で遊んだことがありますか。
がの――いいや、知りませんでした。でもね、いなかの川の堤防などで、お友だちみんなが夕焼け空に顔を染めながら、かげふみごっこをしてよく遊びましたよ。長い長いのっぽさんのかげができるのよね、日がかたむくころになると。
小夜――それにしても、ふしぎですね、青い空に自分のかげが白く映るなんて。
がの――映画やテレビとおなじ、残像の効果でしょうかね。まばたきをしないで足もとの自分のかげぼうしを見ている、ジーッと十かぞえるまで。それからそのままソーッと目を上に向けます。目のさきがさえぎる雲もない青空だったら、空中に白いかげが映っているというのね。
小夜――いつか小夜もやってみよう。それはたのしいお遊びですけど、おはなしのほうはそういうものではありませんでした。からだの弱いおとうさんまでが戦争にかりだされていく時代で、おとうさんからこのお遊びをおしえてもらうのが、出征してお別れする前の日のことでした。家族そろった、さいごのたのしいひとときだったのですね。
がの――あとに残されたおかあさん、おにいちゃん、ちいちゃんは、はげしい空襲に追われ追われて逃げまどう毎日になります。そんななか、ちいちゃんはおかあさんともはぐれて、ひとりぼっちになってしまいました。
小夜――おかあさん、おにいちゃんが帰ってきているはずの、もとのおうちへ行ってみると、そこはあとかたもなく焼けて何も残っていませんでした。おかあさん、おにいちゃんも、どこにいったのでしょう、待っても待っても帰ってきませんでした。ちいちゃんという、小夜とおなじくらいの小さな女の子は、そうして遠い空のむこうへ行ってしまったんですね。
がの――お花ばたけのむこうにうかんだ、おとうさん、おかあさん、おにいちゃんのかげ、…笑いながらこちらに近づいてくる三人の像にむかって、ちいちゃんは行ってしまう。
小夜――60年前にあった戦争のことをもう一度考えてみる、いい機会になりました。亡くなった人の霊魂が帰ってくるという日本の夏ですし。candyさんにおしえていただいたご本です。ありがとうございました。
※あまんきみこ=作、上野紀子=絵「ちいちゃんのかげおくり」あかね書房
☆…転記スミ⇒「SAYO & GANO トーク《4》」
|
|
Re:★青空のむこうに吸いこまれていった小さい女の子(07月24日)
|
|
|
candyさん (2006年07月24日 13時44分)
小夜ちゃんとがの父さんの対話による「ちいちゃんのかげおくり」のお
話・・・。自分たちのやっている影絵シアターの意義をまた再確認しま
した。素人集団の作品ですが、出来るかぎり上演を続けようと思いま
す。梅雨が明けて青空が広がったら小夜ちゃん、かげおくりをやってみ
てね。
|
|
Re:Re:★青空のむこうに吸いこまれていった小さい女の子(07月24日)
|
|
|
がのさん (2006年07月24日 22時05分)
candyさん
>小夜ちゃんとがの父さんの対話による「ちいちゃんのかげおくり」のお
話。自分たちのやっている影絵シアターの意義をまた再確認しました。
素人集団の作品ですが、出来るかぎり上演を続けようと思います。
⇒あのおはなしを、どうやって影絵で表現するのか、興味深いです。小
夜も見てみたいです。たしかに、内容からして、にぎやかに、おもしろ
おかしく語るものではありませんね。声高な押しつけがましい主張はな
く、子どもの感性に立って、モノトーンで、静かに抑えて、しっとりと
語りたいおはなし。奈良のほうの小さなおともだちは、その影絵シアタ
ーをどんなふうに受けとめてくれるのでしょうか。横浜のほうのおとも
だちには、絵本の読み聞かせだけでは、いまひとつピーンときていなか
ったみたい。その点、影絵をつかった表現のほうが、きっと訴える力が
あるのでしょうね。
梅雨が明けて青空が広がったら小夜ちゃん、かげおくりをやってみて
ね。
⇒ハイ。早く梅雨が明け、青空がもどらないかなあ。モデルさんみたい
に、いろいろなポーズをつくってお空にうつしだしてみたいです、入道
のようにおおきなかげを青いお空に。
|
|
Re:Re:Re:★青空のむこうに吸いこまれていった小さい女の子(07月24日)
|
|
|
candyさん (2006年07月25日 00時34分)
がのさん
あのおはなしを、どうやって影絵で表現するのか、興味深いです。小
夜も見てみたいです。たしかに、内容からして、にぎやかに、おもしろ
おかしく語るものではありませんね。声高な押しつけがましい主張はな
く、子どもの感性に立って、モノトーンで、静かに抑えて、しっとりと
語りたいおはなし。
→語りは奈良のお話を語る方々の中では知る人ぞ知る方が語っていま
す。テープに入れてあります。まさに、モノトーンで、静に抑えて、
しっとりと・・・私の中にはその方の語りがしみこんでいます。
影絵をつかった表現のほうが、きっと訴える力があるのでしょうね。
→OHPを2台使います。背景はブルーのセロファン紙、かげおくりの影
がくっきりと大空に浮かびます。空襲の場面はセロファンに炎や燃え
る街並みの絵が巻紙のように流れていきます・・・。ちいちゃんと家
族は3種類を厚紙で最初作ってあったのですが、長年の使用でくたびれ
てきたので、数年前私の夫がベニヤ板で作り直してくれました。お陰
でまだまだ上演できそうです。影絵でこのお話を子供たちに提供でき
るのはきっと正解だと思います。本職の劇団だったら全国ツアーする
ところですが・・・
ちょっと調子に乗りすぎですね(~~;)
小夜ちゃんに見てもらえないのは残念です。
|
|
Re:Re:Re:Re:★青空のむこうに吸いこまれていった小さい女の子(07月24日)
|
|
|
がのさん (2006年07月26日 18時55分)
candyさん
>OHPを2台使います。背景はブルーのセロファン紙、かげおくりの影
がくっきりと大空に浮かびます。空襲の場面はセロファンに炎や燃える
街並みの絵が巻紙のように流れていきます。ちいちゃんと家族は3種類を
厚紙で最初作ってあったのですが、長年の使用でくたびれてきたので、
数年前私の夫がベニヤ板で作り直してくれました。小夜ちゃんに見ても
らえないのは残念です。
⇒ たいへんそうですが、たのしそう。ほんと、小夜も見せてもらいた
いです。影絵シアターのメンバーのみなさんばかりでなく、おとうさん
もおてつだいしてくださったのですね。みんなみんな、子どもたちのた
めにお骨折りくださり、ありがとうございます。こんなにしてたくさん
のかたがたが見まもってくださるのですから、わたしたち子どもは、自
分にあまえて、勝手なことばかりしていてはいけませんね。自分のこと
ばかりでなく、どうすれば自分がほかの人のお役に立てるのか、こうし
たたくさんの好意のなかでしっかり学んでいきたいです。
家も家族みんなも喪ったちいちゃんの寂しさ、こころ細さを想えば、
貧しいことなんかなんでもありません、わがままをいっていてはいけま
せんね。自分のことばかり考えていてはいけませんね。
|
|