Re:Re:◆ウッシッシ! 牛が導く うまし世や…(01月20日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年01月23日 14時32分)
dorothyさん
【その2】
さて、また、ウシ。牛にまつわる故事・ことわざに思いをめぐらして
いるとき、あれっ!? と気づいたこと。文化的にはわが国の兄貴分であ
る中国には、「馬耳東風」「死馬の骨を買う」「下馬評」などなど、馬
はいっぱい登場するのに、牛は闇の奥に押しやられたまま、あまり出て
こないような気がしませんか。いやいや、ここ10日ほど風邪の熱に悩ま
され、まだ病いから抜けられず「暗がりから引き出された牛」のように
ボー~~ッとしているせいかも知れませんし、すっかり日本のことばに
なってしまった「牛ばなし」も、じつは中国の故事からのものがほとん
どではありますが。
そんななか、ふと思いついた中国の故事、わたしの大好きなことばがあ
ります。「舐犢(しとく)の愛」。「犢(とく)」とは子牛のことですね。
古いフォークソングに“donna donna”というのがありましたよね。♪あ
る晴れた昼下がり…、あれ。あの歌といっしょに思い出すことばです
が、母牛が生まれて間もない子牛を舐(な)めまわすさまは、わが子に傾
ける親の愛のきわみの深さと言えないでしょうか。
「犢(こうし)」でもうひとつ思いつくのは、「黒牛白犢を生ず」とい
う「列子」に出てくることば。これはほとんど「禍福は糾(あざな)える
縄の如し」とか「塞翁が馬」と同じ意味。孔子の教えのひとつとされて
います。ある農夫のところの黒牛が白い牛を生みました。孔子に尋ねる
と、これはなかなかよい兆候じゃ、と言われる。しかしそのあとまもな
く、農夫は目を患い、盲目になります。そのことをまた孔子に言うと、
いやいや、それこそ吉祥というものじゃ、と。で、そのあとすぐ、今度
は息子が盲目になります。不幸がかさなり、不信の思いで怒っていると
き、戦争が勃発します。男という男は戦場に駆り出され、揚句に戦死し
ます。ですがこの父子は盲目のために赤紙の徴収令状から免れ、終戦の
あとではパッチリ目が見えるようになった、というめでたい話。
【つづく】
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Re:Re:◆ウッシッシ! 牛が導く うまし世や…(01月20日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2009年01月23日 14時28分)
dorothyさん
【その1】
>母が、ときどき「牛の子の値が下がる」と言っていました。
私が小さいころ、大人の話の横から余計なことばかり、口を挟んでいた
からでしょうか。
----------------------------
ハッハッハ…、ちびdoro さんのおもかげが浮かんできますね。おもし
ろい。ひとこと言ってしまったためにすべての努力がオジャンになると
いう昔ばなし、各地にありましたね。よけいなこと、その場の空気が読
めないで口にしたこと、しかし真実のこと。ラボのおはなしでは「はだ
かの王様」のこどもが発したことば。間違ったことには黙っていられな
いその性格は、いまも旺盛なようで、リンククラブの不正に対する執拗
な追求につながって…。面倒くさがりで、鈍なウシのようなわたしなん
ぞは、多少のお金ですむことなら、まあいいか、となり、まんまと彼ら
の策のうちにはまってしまうところですが。
横あいから口をはさむことを「容喙(ようかい)する」と言いますね。
「喙」は口ばし、「嘴」とも書き、口をとがらせて文句を言う、そんな
印象の漢字。「だいじなおはなしの途中、容喙するようでごめんなさ
い」なんて、礼儀をわきまえた人なら言って、会話に割り込むでしょう
か。でも、よくいますよね、会合の席でこちらが意見を述べていると
き、無神経に手前勝手なことを容喙する人。ほんとうに不愉快。
ところで、関係ありませんが、きょう1月23日が「Eメールの日」だな
んて、ご存知でしたか? イイフミ(文)の語呂あわせと思われます。あ
る友人が知らせて来ました。そんなわけで、このところ体調よろしくな
く、あまり書く気もしなかったのですが、いつもの調子でずらずらと思
いつくまま書いてみます。
【つづく】
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Re:◆ウッシッシ! 牛が導く うまし世や…(01月20日) [ 関連の日記 ]
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dorothyさん (2009年01月22日 11時53分)
母が、ときどき
「牛の子の値が下がる」
と言っていました。
真っ黒な牛に価値があるので、ある牛飼いが
おなかの一箇所にだけ白いところがあり
あとは全部黒い子牛の、そのおなかの部分に
墨をつけて高く売ろうとしたら、牛飼いの子が
「お父さん、あの牛のおなかに墨をつけたままだよ。」
といったばかりに、値が下がってしまった、というもの。
松山弁で、
「ほやけん、いらんことはいわんことよ」
(だから、余計なことは言わないことだ)
私が小さいころ、大人の話の横から
余計なことばかり、口を挟んでいた
からでしょうか・・・。
がのさんの牛話で、思い出しました。
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Re:楽しく読ませていただくだけですみません・・・
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がのさん (2008年12月22日 23時35分)
Kさん
【その2】
ユーゴーといえば、この作品ではなく「レ・ミゼラブル」のほうが有
名ですが、このフランス文学史上屈指の名作のプレリュードのようにし
て書かれた作品。その時代背景は、いまこの時代の日本の状況とそっく
りです。政治の混迷、“未曾有”(どっかのマンガしか読まない人のよう
に、「みぞうゆう」とは読まないように)の景気後退、非正規社員の大量
解雇や契約社員の切り捨て、犯罪の多発、破廉恥な欺瞞、いたいけなコ
ゼットに見る児童虐待…。そして社会の不寛容さと、権力の走狗として
容赦なくジャン・バルジャンを追うジャベール警部にも似た冷淡さ、他
への無関心さ。極刑を求める犯罪被害者の声もありますが、日本にやは
り死刑制度はほんとうに必要なのか、問うてみる必要に迫られていま
す。だれも読まないかもしれないけれど、名作はいつも新しい問題をわ
たしたちのノドもとに突きつけてきます。「忙しい、忙しい」と言って
読まなければ、それはそれでメデタク通りすぎていってしまうのかも知
れませんが。
そう、イヤミで言うのではありませんが(やはり、イヤミかな、ハッハ
ハ)、ケコちゃんたちが馬場くんだりでわいわいメデタク飲んだくれてい
るとき、仕事を奪われ、宿舎を追われた派遣社員たちが、おカネもなく
寝るところもなく、この凍てつく寒空の下にさらされているわけです
ね。今晩など、冷たい雪にもなりそうな雨です。格差社会の残酷さ。
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Re:楽しく読ませていただくだけですみません・・・
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がのさん (2008年12月22日 23時30分)
Kさん
【その1】
>・・・すみません、今日は、帰ります。明日は、久しぶりに馬場で飲
み会です。
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帰ってしまうのかぁ…。ケコちゃん、そんなにあわてなくていいです
よ。落ち着いたところで、ソシュールのこと、ヤスパース…のこと、思
いきり書いてください。デリダ? デリダってダレだ? もう、加齢と
ともに土砂崩れのように内部でどんどん毀れていくものですから、どう
しようもありません。
いまはちょっと大作に近づく余裕がありませんが、ケコちゃんにはい
ずれトルストイのことをばっちり教えてほしいと思っています。それ
と、ドストエフスキーの「カラマーゾフ…」がなぜ今多くの人に読み直
されているのか…。そのへんは、あいまいながらラジオの放送外で青木
奈緒さんとは話したのですが、わたし自身、それを読みなおしてはいま
せんので(すっかり忘れてしまっていますし)、あてずっぽうみたいなも
ので、正直、わかりません。
でも、ホンモノの作品は時代を超えて人の胸板をはげしく撃つものが
ありますよね。12月18日、今年最後の読書会で採り上げたV.ユーゴーの
「死刑囚最後の日」、なるほどいまどきこんな作品を読む人なんぞいな
いのかも知れませんが、どういたしまして、わが国では来年5月から裁
判員制度が現実的に動きだします。死刑判決にいたるような事案とまっ
正面から向かい合わねばなりません。どんなに醜い犯罪であれ、神なら
ぬ身でひとりの人間の命を断つ決定をすることがほんとうにできるの
か、あなたには自信がありますか、問われています。
【つづく】
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楽しく読ませていただくだけですみません・・・
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けいこさんさん (2008年12月22日 00時54分)
という気持ちで、おりまして、今日、やっとお返事しに来まして、
ソシュール、ヤスパース、レヴィ・ストロースや、デリダなんて書き散
らしましたのに・・・
がのさん、なんて書いてあったかな?と、日記を読み返して、書きかけ
の返事に戻ろうとしたら・・・、無い!なんでか消えてる!
・・・すみません、今日は、帰ります。
明日は、久しぶりに馬場で飲み会です。
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Re:Re:◆NHKラジオ「名作を読み直す」、言い残したことなど〔その3〕(12月14日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2008年12月16日 11時12分)
dorothyさん
ありがとうございます。
たまたま機会を与えられて、日ごろ考えている(ほんとうは、あまり考
えていない)「読書」について、その一端をここにまとめることができま
したこと、幸運と喜んでおります。
「読む」とは「読んで考えること」、「見る」とは「見えないもの、
見えないけれどそこに確かにあるものを見ること」であり、知識をふや
すこと、物を獲るためのものではない、と書いたばかり。
で、これはまた、なんという符合か、きょう12月16日の朝刊(朝日新
聞)の1面トップに、「基本は国語力」という大きなヘッドラインで、先
におこなわれた全国学力調査のことが出ていました。その結果を文部科
学省の専門家会議が細かに分析しておりますね。いささかこれには疑問
も感じてはおりますが、国語力を重視したことで算数・数学の学力も向
上した、などは末梢的なこととして、高学力層がふえた学校では、自分
で考える学習に取り組む姿勢が養われてきたことを指摘しています。国
語で「書く習慣をつける」取り組み、「読む習慣をつける」取り組みに
よって高学力層がぐんとふえたことを明らかにしています。与えられた
ものを受容するだけでなく、自分のアタマと感性で考えること。
学力をつけるために読書をせよ、などと子どもたちにいうつもりはあ
りませんが、やはり、すぐれた作品にふれるごとに、ひとは強くなって
いく、生きる力を強くしていくのだと思いますね。
ラボの活動がそういうものであってほしいと願っています。
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Re:◆NHKラジオ「名作を読み直す」、言い残したことなど〔その3〕(12月14日) [ 関連の日記 ]
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dorothyさん (2008年12月15日 05時13分)
福祉功労者の表彰、おめでとうございます。
読書に向かう、という意味では、最近、
いろいろ思うことの多い日々を送っていました。
新しい本をどんどん読むことと、同じ本を
繰り返し読むこと、黙読と朗読、そして
朗読を聴く、という習慣などなど。
これからもますますのご活躍を楽しみにしております。
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:Re:◆NHKラジオ「名作を読み直す」、言い残したことなど〔その2〕(11月26日) [ 関連の日記 ]
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dorothyさん (2008年12月12日 05時08分)
がのさん
源氏物語では、二人(以上)の男にまみえた女性は
出家しており、一人の男性とだけしか関係しなかった
女性は、出家していません。
紫の上は、あれだけ出家させてくれ、と懇願しても
聞き入れてもらえませんでした。もちろん、源氏に
経済的にもたれているために、自分で勝手に出家
できない、という事情もあります。逆に女三宮などは
さっさと出家。これは、天皇の財産をもらえるから。
ではありますが、紫の上は、二夫にまみえていません。
物語の分類上も、紫の上を出家させるわけには行かなかった
と思います。
二股ちゃんは、朧月夜のほかにも、夕顔、浮舟が出てきます
が、他の二人と違い、朧月夜は二股の恋愛を自分で選んで
いるように感じます。性的にルーズで蠱惑的な朧月夜。
名前もいいですよね。あの唱歌「おぼろ月夜」の二番のように
普通、霞むのは視覚だけなのに、「かわずの鳴く音もかねの音も、
さながらかすめるおぼろ月夜」。まさにそのような雰囲気を
感じます。
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Re:Re:Re:Re:Re:Re:◆NHKラジオ「名作を読み直す」、言い残したことなど〔その2〕(11月26日) [ 関連の日記 ]
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がのさん (2008年12月11日 20時44分)
dorothyさん
【その2】
でもさ、よかったじゃないか、それもすばらしいロマンじゃないか。
輝きはないけれど、その年齢にしてまだドキドキさせられる、うらやま
しいような愛。朧月夜さん、忘れがたいすてきな日々をありがとう。だ
ってさ、葵の上、六条御息所、藤壺の宮、夕顔、そして紫の上にも先だ
たれてしまうんだよ、源氏は。つぎには空蝉もこの朧月夜も世を捨てて
仏門に入る。源氏独りがポツンと取り残される。これ、グルンパのさび
しさどころじゃないよ。父親を裏切った自分が今度は若い妻の裏切りに
あう。何がおもしろくて生きているんじゃい、わたしは…!
情熱と歓楽にふけるひとときもあれば、悲哀と喪失感にひしがれ号泣
するときもある。人生の春夏秋冬の「うつろひ」。それは貴賎を問わな
い。良くも悪くもそれが人の一生というものか。
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