★ゲーテの「ライネケ狐」(ドイツの古い動物寓話)を、小野かおるさん、斬新な技法で |
09月30日 (土) |
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上野の東京都美術館で開催中(10月3日まで)の第70回「新制作展」。
今年も小野かおる先生のお招きを受け、行ってまいりました。
何ごとにも囚われない、自由さ120パーセントで制作する造形。
意味を問われても答えようのない闊達な表現の世界です。
そんな空間にこの身をたゆとわせるひとときの心地よさ!
スペースデザイン部門と彫刻部門をゆっくり鑑賞させてもらいました。
わたしだけいい気分にさせてもらっては申し訳なく、
せっかくですので、みなさんには小野先生のご労作をご紹介いたしましょう。
(お許しを得ましたので)
たいへんな力作ですよ。すごいですね、絶えざる挑戦! 飽くなき探求!
今風の、マニュアル的思考の無感覚さ、厭味な未成熟さとは
何という遠い距離にある表現か!
色の狂騒もここには、ない。メタリックな平面に浮き出たシンプルなフォルム。
その単純さのなかに、詩的情緒と寓話的雰囲気を注ぎこんだ作品です。
そこには、欲もなくムダもなく、清廉でつつましく、見るものをホッとさせてくれるものがあります。
昨年もここでちょっと見ていただきましたね〔このページ末尾に写真〕。
小石の表面に黒のふしぎなフォルムをのせた造形。これもシンプルでした。
「はるかぜとぷう」や「幸福な王子」や「ありときりぎりす」でもない、
「かぶ」でも「一寸法師」でもない、ずっとずっと遠い世界。
小野かおるさんの指向する新しい世界がその線上にあるのでしょうか。
『ライネケ狐Reineke Fuths』、ドイツほかヨーロッパに広く、
古くから伝わる動物寓話。根性の悪いキツネのはなしですね。
フランスでは「ルナール」の名で親しまれています。
悪知恵をはたらかせ、さんざん悪いことをやって立身出世をする
ずるがしこいキツネ。今の世にもいるじゃないですか、
自分さえよければいいと、他をかえりみない、こんなのが。
ゲーテがこの話を韻文の叙事詩にしているのをご存知でしたか。
芥川龍之介がどこかでベタ誉めしていましたよね、
「ゲーテは、これを書いただけでも十分に偉大だ」と。
①オンドリのヘニングは云った、「ごらんください、この娘の亡き骸を!」
②熊のブラウン/前あしを引こうとして、もがけばもがくほど、
痛みはいっそう耐えがたく…。
③猫のヒンツェ/あわてふためいてもがいたので、
縄がぎゅっと縮まった。
④ライネケは、とうとう梯子を登らされ、処刑寸前となったとき、
高いところから口が開いた…。
今回の出展はこの4枚だけ。12枚で完成の予定だそうですが、
つづきは来年のこの「新制作展」で発表するおつもりとか。
ご覧いただきましたように、あまり見ない技法に挑戦なさっています。
説明を受けたのですが、この道に暗いわたしには、よくわかりませんで、
金属(ブロンズ)の粉に樹脂を混ぜたものを筆で描いたのちかためるという手法を基本にするものとか。
1枚の一辺が1メートル弱、けっこう重いものだそうです。
ぎっくり腰の先生、搬入のお手伝いをしてさしあげればよかったのに。
(なお、上のキャプションは上田真而子さんによる)
1月20日の日記「空白がつくりだす美しさ…」より
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Re:★ゲーテの「ライネケ狐」(ドイツの古い動物寓話)を、小野かおるさん、斬新な技法で(09月30日)
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Hiromi~さん (2006年10月09日 11時36分)
小野先生の展覧会いけずに残念でした。母が危篤状態になり大騒ぎを
しましたが、すごい生命力で、今は少し元気になりひとまずホットして
います。97歳の誕生日を迎えた直後でした。
小野先生の今年の作品はすばらしいですね。昨年も面白い作品をおつ
くりになると思いましたが、今年のはまた違った感じで、実物を見たか
ったです。
ゲーテの古い寓話知りませんでした。探してみます。
えいちゃんは小野先生にはお目にかかれなかったようです。おりを見
て作品をお持ちするとか言ってました。
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Re:Re:★ゲーテの「ライネケ狐」(ドイツの古い動物寓話)を、小野かおるさん、斬新な技法で(09月30日)
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がのさん (2006年10月09日 19時14分)
Hiromi~さん
【その1】
> 小野先生の展覧会に行けずに残念でした。母が危篤状態になり大騒
ぎをしました。97歳の誕生日を迎えた直後でした。小野先生の今年の作
品はすばらしいですね。昨年も面白い作品をおつくりになると思いまし
たが、今年のは、また違った感じで、実物を見たかったです。
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皆さんそれぞれにたいへんな事情をかかえておいでで、たいへんで
すね。わたしも、母の法事のためにeieiさんとの日程が合いませんで、
ごいっしょできませんでしたし、先生ご自身の周辺にもご不幸があった
とかで、当日、会場で先生にお目にかかることができませんでした。観
に行った日の晩に、電話でいろいろ長話をさせてもらいましたが。
ええ、たいへんな力作だと思います。銅板画かな、と思いました
が、そうじゃなく、何と呼ぶ技法なのか、聞いたはずなのに、こちらの
不勉強のために記憶にとどまっていないというお粗末ですが、シンプル
ですっごく魅力ある表現。天衣無縫のようでいて、じつは微妙な計算が
ある、といった作品。「トシなので、もう細かいものは描けません」な
んて、あのひとらしいことをおっしゃって、ケラケラお笑いになり、
「それにしては、重くてかなわないのよね、今度の作品は。ぎっくりご
しにテキメンなのよ」とのことでした。上野のあの会場がお好きなのだ
そうですが、来年からは六本木にできる新しい都美術館に移して「新制
作展」はおこなわれるそうで、「なんだか、わたしはそれがイヤなの。
トシよりのわがままといわれるのですが」とか。そういえば、昨年とま
ったく同じコーナーに先生の作品は展示されてありましたよ。どこに展
示するかにもこだわりをお持ちのご様子。まあ、このあと、つづきの作
品に継続して取り組まれることでしょう。これを本になさるおつもりは
ないようでしたけれど。相変わらずハツラツとした声で、お元気そうで
したよ。
絵本作家を目ざして有望なeieiさんが、小野先生の作品、あるい
は、まさに目がまわるような、創意100パーセントで奔放に表現されるあ
れらのユニークな作品群をどう自分のなかに捉えたか、そこが肝心です
ね。これまでどおり、どうぞ応援してあげてください。
【つづく】
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Re:Re:★ゲーテの「ライネケ狐」(ドイツの古い動物寓話)を、小野かおるさん、斬新な技法で(09月30日)
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がのさん (2006年10月09日 19時16分)
Hiromi~さん
【その2】
朝からゆっくり、じっくり、彫刻の部のほうまで「新制作展」を観
て、そのあと、さきにメールでお知らせしたように、国際子ども図書館
で北欧の絵本・児童文学の世界にどっぷりと浸り、たのしみました。こ
の夏、ノルウェーに行って来た友人に見せてもらった、おびただしい数
の北欧の風光がアタマにありましたので、北欧特異のものがたりを一段
とリアリティをもって見ることができたかも知れません。エッダ、カイ
ワラからはじまってビヨルンソン、イプセン、トペリウス、ニルスのラ
ーゲルレーヴ、ハムズン、ベスコフ、北欧のグリムと言われるアスビョ
ルンセンとムー、ムーミンのトーベ・ヤンソン、もちろんアンデルセ
ン、トロルのおはなしもいっぱい……、ほんとうにゆたかなものがたり
の世界があそこにはありますね。来年の1月末までこの企画展をやって
いますので、ラボの皆さんにはぜひ見ておいていただきたいと願ってい
ます。
この日は、もうひとつ、東京芸術大学大学美術館の展覧会も観るつ
もりでしたが、もう、こころも足のほうもいっぱい、いっぱいで、あと
は根津・谷中までのんびりと歩いて出て、そこで3年前に軽食のお店を
はじめた大学時代の友人(宮澤賢治の作品を制作するときにラボがお世話
になった詩人A.T氏の妹さん)のところに立ち寄っておしゃべりをして帰
ってきました。
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