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ちゃこの童話ー(12) |
01月23日 (水) |
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だるまのお腹はありの家
リキさんとユウさん夫婦の庭には植木がたくさんあります。何年も前に植えた苗木が大きくなって剪定や手入れが大変です。
リキさんが大きくなったモチの木を眺めていいました。
「これ以上大きくなったらお隣さんに迷惑だな。切らせてもらおうか。」
チェーンソーを持ってきました。ユウさんはあわてて手に塩を握って出てきました。木の周りに塩をまき、手を合わせました。
「ごめんね。大きくなりすぎたの。切らせてね。」
チェーンソーの音が響きました。きれいな年輪が出て、切り株は腰を下ろすのにいい場所です。切り倒されたモチの木は枝を払い、丸太は30センチぐらいに切って低い腰掛を作り、庭のあちらこちらに置きました。そのうちの一つは、リキさんには考えがあるらしく、部屋の中に持ち込みました。
ユウさんは畳の上にアリを見つけました。
「ありがいる。ここにも、あそこにも。」
よく見ると、部屋の中をうろうろしているアリは、リキさんが持ち込んだ丸太から出てくるのです。
「きっとこの木の中にアリの巣があるのよ。こんな木捨ててよ。」
ユウさんは叫びました。
リキさんはその木を外に出しましたが、なぜか捨てる気はありません。なでまわしたり、四方から眺めたりして、考え込んでいます。
電動のこぎりを持ってきて、ビービー削り始めました。角を落とし、丸い形の一部分を半分まで切り込んで落としました。それからは毎日毎日ノミをもってその丸太に彫りを入れていきます。ユウさんは、どうしてアリの巣があるような木で作るのか,いったい何をするつもりなのかと、怒ったり呆れたりしていました。
形ができてきました.だるまです。太い眉におおきな鼻、目は細く笑っています。
ひげがあって、すぐにお腹のふくらみになっています。口はひげの下にあるのでしょう。仕上げをして、リキさんはそれを切り株の上に置きました。
だるまのひげの下からは、次々とアリが出てきます。リキさんは砂糖をだるまのお腹の上に置きました。次の日にはなくなっていました。アリが運んだのか、溶けたのか、わかりません。リキさんはクッキーを細かくしておきました。アリが次々と出てきて運んでいきます。リキさんは面白くなってチョコレートや小魚などを置いて眺めています。
夏中こんなことをしていると、ある日、急にアリの数が増えアリも大きくなったように思いました。そのアリたちは列をつくって、近くの蜂谷柿の木に登っていきます。リキさんは、だるまのお腹の中には立派な巣があって、女王アリがいて、たまごがたくさんあって兵隊アリたちが守っているのだろう。チェーンソーのひびきにはびっくりしてパニックになっただろうなあ、と想像していると急に足を引っ張られました。アリたちがリキさんの体に群がってすごい力で引っ張ります。まるでガリバーみたいだとリキさんは思いました。だるまの口からお腹へ引きずり込まれたリキさんは立派な通路を通り、卵の部屋や食料の倉庫、たくさんの部屋を通り、女王様の前に行きました。
女王アリはリキさんに話しました。本当にびっくりし、一時はみんなで死を覚悟しました。こんなに平和に暮らせるようになって本当に感謝しているといいました。そして兵隊アリたちにリキさんの庭の草木を守るように、よく働くようにと命令したといいました。
リキさんは女王アリに見送られ、外に出ました。アリたちは蜂谷柿の木にのぼって枝のあちこちに群がっていました。
秋になりました。干し柿の好きなユウさんが植えた蜂谷柿の木は、毎年花を咲かせ,実がなるのですが、ピンポン玉くらいになると全部落ちてしまうのです。今年もたくさん実はついたのですが、次々と落ちていきます。やはりだめなのかと、あきらめていたユウさんは枝の上のほうに色づきかけた二個の大きな柿を見つけました。
「初めて柿が二つなったよ」
ユウさんは、うちでなった柿が食べられると大喜びです。
二この柿は落ちることなく赤く色づきました。ユウさんは丁寧に切り取って皮をむいて軒先につるしました。
リキさんは落ち葉の庭を歩きだるまの顔をのぞきこみました。
「ありがとうよ。アリ君たちよ。」
冬支度も済んだのでしょう。アリの出入りはありませんでした。
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